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更新日:2024年2月27日

日向はまぐり碁石ができるまで

はまぐり碁石とは?

 はまぐり碁石(白石)は、はまぐり貝を研磨してつくられており、乳白色のまさ目の細やかな縞模様と、微妙な丸みが温かく、美しい宝石のような輝きがあります。また、組織が硬く緻密なため、丈夫で手垢がつきにくいという特性を持っています。

 特に日向市のお倉ヶ浜で採れるはまぐり貝は、硬度が高く、キメも細かいため、最高級の碁石と言われており、その希少価値から「幻のはまぐり碁石」とされています。

 しかし、お倉ヶ浜のはまぐりは現在絶滅寸前で、原料の主力はメキシコ産のはまぐりに移っています。

 白石と蛤貝殻

 はまぐり碁石は、その貝が自らもつ色素や、砂中にある間に含まれた色素などにより、上から順に雪・月・花の3種類に分かれています。さらに、それを厚みによって分けることで全部で50種類ほどになります。

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雪印 

 特に厳選された碁石で、はまぐり碁石特有のきめ細かな縞目が通り、美しい乳白色をしています。

月印

 風格は雪印と同じですが、縞目がやや大まかだったり、わずかに色がかかっていたりしています。

花印(実用品)

  縞目がかなり大まかなものや、はまぐり貝特有の薄く赤茶色のついたものです。

 

はまぐり碁石製造の歴史

 みなさんは、はまぐり碁石がいつごろから作られるようになったかご存じでしょうか。それは、明治時代にさかのぼります。

 囲碁の歴史は古く、中国から伝わったものです。碁石は以前、石や木で作られ、その後宝石類が使われるようになりました。貝殻で製造されるようになったのは明治時代の初期のころで、三河(現在の愛知県の東部)の桑名のはまぐりが原料とされ、大阪で製造されていました。

 その後、桑名のはまぐりが不足するようになったころ、大阪の碁石屋「石橋小七郎」は、富山の薬屋から日向の浜で変わったはまぐりの貝殻がたくさん打ち上げられていたことを聞き、早速番頭の「森元次郎」を調査に向かわせました。

 元次郎が日向に来てみると、確かに足の踏み場もないほどの貝殻があり、元次郎は小躍りして喜んだと言います。元次郎は、拾い集めたはまぐりの貝殻を船を使って細島から大阪の石橋小七郎のもとへ送りました。これが、日向のはまぐりが碁石の原料として使われだした始まりです。

 明治17年刊行の日向地誌には「日向の地(現在の日向市)がはまぐりの産地である」こと、また、宮崎県古公文書には「明治25年に貝殻を大阪方面に出荷している」ことが記されています。

 日向のはまぐりを原料に作られた碁石は、名実ともに大阪の名産となり、最高級品の名をほしいままにしていたそうです。
 

日向で碁石製造に取り組んだ原田清吉

 日向の地ではまぐり碁石の製造に取り組んだのは、「原田清吉」です。清吉は、元次郎に雇われて貝殻拾いをしていましたが、「はまぐり碁石を地元日向で作りたい」と思い、碁石職人になるため大阪へ行きました。その後、大阪中の碁石屋で経験を積んだ清吉は、一流の碁石工となって帰郷しました。

 帰郷した清吉は、大阪で知り合った小川栄次郎を呼び寄せ、財光寺の自宅ではまぐり碁石の製造に取り組み始めました。1908(明治41)年ごろのことでした。

 

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碁石の製造を日向の地で取り組んだ原田清吉

 

 

 

 

はまぐり碁石の製造方法

 はまぐり碁石の製造は、貝殻の採取から始まります。貝殻の採取方法として、古い順にジョレン掘りからサンドポンプ船まで複数の方法があり、時代とともに進化してきました。

 

ジョレン掘り

 貝殻の採取法が道具化された最初のものです。土砂をかき寄せることに使われるジョレンに似た道具で、棒の先に竹などで編んだ網をつけたものを、若者数人が円陣になって交互に砂中に打ち込み、砂中の貝殻がその網にかかってくるというものです。

床掘り

 大掛かりな採取法の一つで、数十人が一団となって浜を掘るものです。海岸近くに住む農家の人々の農閑期の仕事として長年行われてきました。

モグリ

 潜水して採取する方法のこと。海水が澄み切ったときには、寒暑に関係なく採取が行われましたが、特に台風などにより海が荒れた後には思わぬ収穫があったと言います。

鉄管掘り

 昭和15年に初めて試みられた方法で、床掘りを少し進歩させた採取法です。直径2メートルほどの円の外側に鉄管を据えて土砂の崩壊を防ぎ、砂と海水を汲み上げて貝殻を採取するというものです。

サンドポンプ船

 昭和27年に初めて応用された最も進歩した原料採取法で、ポンプで海水と一緒に海底の土砂を吸い上げ貝殻を採取する方法です。 平成8年頃まで使用されていました。

  

 このほかにも貝桁網という原料採取法がありますが、これは生貝を採取する方法で、日向名物はまぐり料理を生み出すきっかけとなった採取法です。肉は料理に、貝殻を碁石の原料としました。

 以上のような採取法によって集められた貝殻は、次のさまざまな工程を経て碁石となります。

  

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くりぬき作業

貝殻をダイヤモンドドリルで直径約22ミリにくりぬく作業です。粗取りとも言われたもので、碁石として最も適した部分をくりぬくには、かなりの熟練を必要とします。1枚の貝殻から1~2個しか取れません。

厚み分け

くりぬかれた原料を15段階の厚み別に分類します。

 

面ずり

厚み分けされた原料を片面ずつ、一つ一つ研磨機で碁石の形に整えます。この工程は、粗ずり、中ずり、仕上げの3段階に分けられていて、研磨の過程で品質を選別しながら、さらに次の研磨にかけます。 この研磨と選別を5~6回繰り返し徐々に形を整え、品質を最高のものに高めます。厚みを保ち、高級製品に仕上げるには、10~15年以上の熟練した技術が必要です。

 
手ずり

面ずりしたものを、厚みを出来る限り減らさずに、貝棒と砥石を使ってはまぐり碁石独特の微妙な丸みに仕上げていきます。全工程の中で最高の技術と経験を要する重要な工程です。この手ずりの技術によって、製品の優劣が決定するもので、最高級製品として仕上げるには、15年以上の経験が必要とされています。

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選別

厚みで分類した後、石の色彩、形、光沢、縞目模様、傷等を慎重に点検し、雪・月・花などに分類します。これも豊富な経験を必要とします。

 
樽磨き

樽の中に4,000~5,000個の碁石と水、磨き粉を入れ、7~8時間回転させます。これにより碁石と碁石が摩擦しあい、一段と光沢が出ます。

 
さらし(漂白)

過酸化水素水に2昼夜浸し、天日で乾かします。これを5~6回繰り返して、真っ白な碁石に仕上げていきます。

 最近では、碁石の生産は機械での研磨が中心となってきました。今では、昔ながらの、「手ずり」と呼ばれる工程を通るのは、日向市のお倉ヶ浜で採れる、はまぐり貝から作られる碁石だけです。

  

伝統工芸士

 はまぐり碁石の製造は現在まで、熟練した技術を有する伝統工芸士により守られています。

 宮崎県伝統工芸士の制度は、「伝統工芸品の製造に携わる者の社会的評価を高め、もって伝統的技術・技法の維持向上と、技術・技法の修得意欲の増進を図り、地位向上と後継者の確保を図る」ことを目的に、昭和58年に制定されたものです。

 現在、碁石製造業者は市内に4社あり、各製造業者に所属している伝統工芸士3名が、宮崎県伝統工芸士として碁石製造に取り組んでいます。

 しかし、伝統工芸士も、高齢化や機械化、後継者不足が加速し、引退する人や廃業する人が年々増えてきています。

  

日向はまぐり碁石まつり

 日向はまぐり碁石まつりは、例年10月末頃に開催しているイベントで、今年で33回目になりました。今年は囲碁大会に加え、親子向けの囲碁体験教室を開催しました。

 親子向けの囲碁体験教室には、14組36名の親子にご参加いただきました。ゲストのプロ棋士2名が講師となり、親子で会話をしながら楽しく囲碁を学ぶことができました。

 囲碁大会は、九州各地から囲碁愛好家がつどい、はまぐり碁石と榧碁盤の滑らかな本物の感触を楽しみながら対局するという、全国唯一のはまぐり碁石の産地・日向市ならではの催しです。今年は、九州・沖縄各県代表個人戦と宮崎支部代表団体戦の2部門に分け、56名の代表選手が対局を行いました。そのほかにも、ゲストのプロ棋士2名による指導碁や決勝戦大盤解説を行いました。

 今年の碁石まつりの様子や過去の囲碁大会成績については、こちらをご覧ください。

 親子で囲碁体験教室  囲碁大会  指導碁  決勝戦大盤解説
親子で囲碁体験教室 囲碁大会 指導碁 決勝戦大盤解説

  

碁石まつりに関するお知らせ

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■日向はまぐり碁石まつり実行委員会事務局 公式facebook

  

碁石・碁盤に関するお問い合わせ

赤木碁石製造所 0982-54-3080
稲田碁石製造所 0982-54-4534
黒木碁石店 0982-54-2531
三桝碁石店 0982-57-1005

  

その他お問い合わせ

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