広報ひゅうが平成25(2013)年3月号

文化財から防災を考える-文化財は防災資料*


耳川河口にある中ノ島


 東日本大震災の発生をきっかけに各地で防災計画の見直しや、 より高いレベルで住民の生命、財産を守ろうとする動きが活発になってきています。本市でも、防災・減災に向けたさまざまな事業や市民の皆さんの防災意識の向上などに取り組んでいるところです。
 さて、美々津の耳川河口にある中ノ島は、上流から運ばれてきた土砂が堆積してできたものですが、ここは美しい弁天様を乗せた鯨が姿を変えていると伝えられています。
 また、門川町と本市の沖合に浮かぶ批榔島は、前にもお知らせしたように神武天皇が大和に向けてお舟出された際に、細島の沖で見つけ、命を助けた母子の鯨の化身だと言われています。
 ここで昨年の9月号で紹介した幸脇の鹿島神社のことを思い出してください。そう、鹿島の神様は地震を起こすナマズを押さえ込む力を持っていると考えられています。鹿島神社の本宮は茨城県にありますが、幕末に起きた大地震以降、地震封じの神様として全国へ勧請されて行ったことが知られていて、たくさんのお札や浮世絵もあるのですが、その多くにはナマズではなく、 鯨の姿が描かれています。つまり地震を起こす大ナマズが、じつは鯨だと考えられていたようです。中ノ島や枇榔鳥、そして細島に残る鯨の伝説には、 弁天信仰や神武天皇伝説とはまた別の意味があるのかも知れません。
 ところで、中ノ島にはレッドデータブックに絶滅危惧種として登録されているカワラハンノキをはじめ、稀少な植物群落が保存されています。
 私たちは文化財を保護しながら、それらを手がかりにして地域の自然や歴史を知ることができます。文化財は防災資料としても利用できる過去からの贈り物です。

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