広報ひゅうが平成24(2012)年9月号
美々津「フクトヶ浦」*

フクトヶ浦の海岸
フクトヶ浦は日向サンパークの東側に位置する海岸で、毎年、5月から7月にかけてクサフグの大群が産卵のためにやってきます。
また、この海岸は打ち寄せる波の音と波に洗われて転がる砂利の音とが絶妙で、高いヒーリング効果をもたらすと言われています。
さて、美々津を出た神武天皇の一行が遠見にさしかかるとフグの大群が行く手をさえぎりました。そこで天皇は舟を岸に寄せ、浜石を一つ拾い上げ、尖った矢じりの先で祈願文を刻み、神社にフグが退散するよう祈りました。すると、たちどころにフグはいなくなり、天皇は航海を続けることができたそうです。
この故事に習い、当地の鹿島神社へ願い事を書いた浜石を奉納すると必ず叶うと言われています。
「古事記」や「日本書紀」によると、後に神武天皇が紀州熊野で窮地に立たされたとき、不思議な霊力を持つ建雷神(タケミカヅチ)の剣の力で救われました。この建雷神は鹿島神宮(茨城県)の主神です。建雷神は、東征の初期の段階から神武天皇を手助けしていたのでしょうか。
また、鹿島の神建雷神は地震を起こす大鯰を懲らしめ、力を封じることができる神と伝承されています。そんな鹿島神社がフクトヶ浦に祭られている背景には、何か別の歴史が隠されているのかも知れません。
ところで、鹿島神社の前にも大きな磐座があります。これは一辺5メートルほどの石が4つ、「田」の字のように配列しているもので、軸線は東西南北を示しているとも言われています。
岩質や形状から、日向岬の「十文字(クルス)」のミニ版と言えるようなものです。どうも神武天皇の由緒地には巨石が多いようです。