広報ひゅうが平成24(2012)年2月号

名勝「妙国寺庭園」


国指定文化財 名勝「妙国寺庭園」


 細島にある妙国寺は、日向が生組んだ名僧日叡上人が、南北朝時代にあたる康永年間(1342〜45年)に開山したと伝えられています。
 寺の中にある庭園は、国指定名勝で200坪ほどの境内に人工の池や、3か所の山(築山)を築き、要所にカエデやツバキなどを植栽した「池泉鑑賞式」の庭園で、周辺に広がる米ノ山の自然林とともに四季折々の日本の風景を見事に表現しています。
 また池には、中島も造られていますが、築山はすべての生き物が住む三界(欲界、色界、無色界)、池の小島は悟りの世界(彼岸)を表しているとも言い伝えられていて、この庭園がただの観賞用の庭ではなく、寺を訪れた人たちに対して仏法を説くためにも利用されていたことをうかがえます。
 もっとも、有名な寺院庭園の多くはこうした目的にそって築かれてるものが多く、美しさや豪華さだけを追求する一般の庭園とは基本的に異なっています。しかし、妙国寺庭園の場合、タブやクスなどによって構成されているバックの自然林が幽玄な雰囲気を醸し出すことに一役も二役もかっていることには注目しておく必要があります。
 おそらく妙国寺庭園の設計にあたっては、人工的な庭園と自然との調和や融合と言ったものが、最大のテーマではなかったのでしょうか。
 自然は、私たちが想像する以上にデリケートなものです。人が手を加えることによって本来の姿や価値を失ってしまうものがたくさんあります。
 妙国寺庭園は、県内では唯一か所の国指定名勝庭園だけに、あくまでも周到な計画のもとに自然と人との調和を考え、しかも美しく知性的な庭に仕上げられているように思われます。


日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。

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