広報ひゅうが平成23(2011)年8月号

別府の盆踊り


日向市無形文化財指定「別府の盆踊り」


 別府は、美々津重要伝統的建造口物群保存地区の西に接する集落で、石垣によって区画された江戸時代以来の道が今も残っています。
 この地区に伝わる供養盆踊りは、優れた芸能と確かな伝統を誇る県内でも有名な盆踊りで、平成4(1992)年に市の無形文化財に指定されています。
 この盆踊りは、初盆の家を一軒ずつ回りながら踊り、各家の精霊や遺族の心をも慰めるもので、白を基調としたものであれば踊り手の衣装には特に制限はなく、頭には網笠を目深にかむり手拭いで口を隠すのが特徴です。
 構成は、太鼓打ちと音頭取りが各1人で、踊り手は男女を交えた20人ほどで4列縦隊になって踊るのが本来の姿ですが、狭い庭や道端で踊ることもあるため、「打ち込み」と呼ばれる音頭と踊りに始まり、その場の雰囲気に合わせて音頭や踊りを変え、最後に「打ち上げ」の音頭と踊りでおよそ20分の踊りをしめます。また別府の供養盆踊りは唄と踊りが豊富で、特に唄は多数の口説に分かれている高度なものです。
 口説の内容や拍子などからも、この踊りと唄は瀬戸内地方に流布していた念仏踊りと、大阪の河内付近で流行していた音頭類とが影響し合って成立したものと考えられますが、そう言えば別府の真下に位置する美々津港は瀬戸内や京阪神方面との交易で栄えていた所です。おそらく美々津から船出して行った美々津商人や船員たちがこの盆踊りの原型を持ち込んだにちがいありません。このことは美々津の商人たちが、文化交流の担い手でもあったことの証でもあります。
 別府の供養盆踊りは、波おだやかな瀬戸内の海や豊後水道を経て、たくましく陽焼けした千石船の乗組員が大切に持ち帰った上方みやげのひとつなのです。


日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。

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