広報ひゅうが平成18(2006)年9月号
若山牧水生家

生家全景
日向市東郷町坪谷にある牧水生家は、歌人若山牧水が生まれた家で、江戸時代後期に牧水の祖父である若山健海によって建てられた建物です。
健海は、現在の埼玉県所沢市に生まれ、15歳のころから江戸・福岡・長崎で漢学・蘭学・西洋医術などを学んでます。天保7(1836)年、25歳のときに坪谷に移り住んで開業し、弘化2(1845)年に診療所をかねた2階建ての家を建てています。医院としての機能を持たせるために、当時としては大きな構えの家を作る必要があったようです。横長な家屋の中央付近に玄関が設けられ、向かって右側を診療所として、左側を家族の生活空間として使用していたようです。さらに石垣に囲まれた敷地には、井戸や馬小屋をかねた納屋などもあり、当時としては大そう立派な家構えだったようです。
牧水(本名:繁)は、この家の東にある縁側で姉たちに一見守られながらコトリと生まれたとされており、夏場涼しいその場所はその後も牧水のお気に入りとしてよく寝転んでいたといいます。
多感な幼年期を山紫水明の地、坪谷で過ごしたこと、家族や地域の人々によって愛情たっぷりに育てられたことは、牧水の短歌作品に大きく影響しています。雅号の牧水は、母である牧(マキ)と坪谷川の流れを合わせたものです。
生家は昭和4年に県文化財の指定を受けています。約160年の年月がたつうちに老朽化が激しくなったことから平成17年に大規模改修を行いました。一部新材が用いられていますが、牧水が生まれた縁側や父と酒を酌み交わしたイロリなど当時の空気を多く残しており、牧水の愛した尾鈴連山を一望できる絶景となっています。
皆さんも一度、牧水の生家と牧水が過ごした坪谷の地を訪ねてみてはいかがでしょうか。
日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。