広報ひゅうが平成20(2008)年1月号
正法寺年中日誌

正法寺年中日誌
塩見中村の正法寺にある市指定文化財「正法寺年中日誌」は、細川宗慶という住職が書いた、幕末から明治時代の記録です。
細川家の先祖は、いま350年ほど前の南北朝時代一に義門寺(東諸県郡国富町)を創健しましたが、その子孫が後に塩見へ来て正法寺を開いたといわれています。
その後、正法寺は細川家によって守られてきましたが、この年中日誌を読むと当時の社会情勢を知ることができます。
例えば、明治10(1877)年の西南戦争については「官軍の戦艦が細島港に入港し、人々は大騒ぎして避難して行った」とか「夜中にも軍艦が入港して兵隊が上陸してきた」ことなどが記されており、当時の緊迫したようすなどがうかがえます。
また、富高新町の佐藤仙吾宅に西郷隆盛が宿泊したことも記されています。ちなみにこのときは「西郷隆盛が犬を4匹連れて歩いていた」とも付け加えられています。
さらに「西郷の歌」と題して、つぎの歌が記録されています。
♪アイヤ西郷は鰯か雑魚か、鯛(官軍の部隊)に追われて逃げまわる――肥後は三味線、鎮台(官軍)さんは糸よ、薩州(西郷軍)はバチかぶって引くばかり――
これらの歌は、おそらく当時の庶民の間で流行した歌と思われます。
戦乱の巻き添えになった人たちが、せめてものウサ晴らしと反骨精神を表現したものとして注目されます。
そのほか、まだたくさんの興味深い歴史の一コマが記されていますが、これらの文章は少しくらい難しくても、やはり原文を読む方が味わい深いものです。
市史編さん事業により「正法寺年中日誌」が2冊の資料集にまとめられていますので、みなさんも辞書を片手に挑戦してみてください。
日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。