広報ひゅうが平成19(2007)年8月号

冠嶽三所大権現の梵鐘


梵鐘


 日向市東郷町のシンボルともいえる冠岳。東郷町地域自治区では「冠岳ふるさと千年の森」を設定して山の自然を後世に引き継いでいくと共に、私たちの永久財産として守り、育てていくことにしています。
 屏風のようにそそり立つ雄々しい山ですが、いったん登山道を登ると春には市指定天然記念物の「冠岳の山桜群」が咲きみだれ、秋には紅葉狩りが楽しめる山で、東郷の豊かな自然を存分に満喫することができるでしょう。
 さらに頂上付近の展望所から望む景色は、眼下にとうとうと流れる耳川や山陰(やまげ)の町が見下ろせたり、遠く日向灘まで遠望することができる絶景ポイントとなっています。
 その登山道の途中の第4展望所付近に、すばらしい龍の彫刻が彫られた冠嶽三所大権現のお社があります。
 このお社に奉納された「梵鐘」が昭和46(1971)年に県有形文化財に指定されています。
 この梵鐘は、古くから鋳物の産地として有名な大分県大分市駄原(だのはる)で造られたもので、在銘鐘の中では南九州で最も古いものと位置づけられています。
 天文18(1549)年に願主である中俣大炊左衛門尉重昌(なかまたおおいざえもんのじょうしげまさ)という人物が一族の無病息災などの願いをこめて冠嶽三所大権現に奉納したもので、文中に日州新納院山毛保(にっしゅうにいろいんやまげほう)との記載があることから、16世紀には当地が山毛と表記され新納院に含まれていたことがわかります。
 新納院は平安時代に開発された荘園で、建久7(1197)年の日向国図田帳には児湯郡内にあったと記されていますが、のちに荘域を拡大し臼杵郡にまで広げたとされています。
 この梵鐘は宮崎県の中世史を理解するうえで欠くことのできない貴重な資料であるといえるでしょう。
 現在は羽坂区硯野に分祀された辰手大明神の故地に安置し、宮司であった寺原家により代々大切に受け継がれています。


日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。

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