広報ひゅうが令和元(2019)年5月号
富高2号墳の鏡

富高2号墳
富高の古城ヶ鼻にある若宮近隣公園は県指定「富高1号墳」と「富高2号墳」を取り込むかたちで整備されています。このうち富高2号墳は日向・門川・入郷地域では唯一の前方後円墳で、全長88メートルの大きな古墳です。
この古墳は大正5(1916)年に発掘されており、5世紀前半の鎧や兜の破片、鉄製の矢じり、そして「四獣鏡」と呼ばれる鏡が出土しています。これらの遺物は、現在、東京国立博物館に収蔵されています。関係資料として、発掘した「手塚鉄骨」という人が書いたメモや当時の宮内省(宮内庁)が宮崎県に命じて作成した古墳の発掘に至る経緯、出土品の調査報告書も併せて収蔵されており、富高2号墳の研究には欠かすことのできない貴重な資料となっています。
宮内省は、富高2号墳を「陵墓(天皇家のご先祖や「古事記」に出てくる神々の墓)ではない」と判断し、全ての出土品を宮内省ではなく東京帝室博物館(東京国立博物館)で保管するよう指導しています。
ところで、若宮近隣公園が造成される前に市教育委員会が富高2号墳の一部を発掘したところ、新たに「四獣鏡」が1面出土しました。
これを詳しく調べたところ、この鏡は大正5年に出土したものと同じ鋳型から造られた「同范鏡(どうはんきょう)」と呼ばれるもので、高鍋町の持田古墳群からも同じ鏡が出土していることが分かりました。
古墳時代、強いつながりを持つ盟友や圧倒的な上下の関係にある有力者たちが、同范鏡を分け持つ風習がありました。富高2号墳から出土した鏡は、そうした古代史の一面を語る一級品の考古資料ということができます。
日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。