○日向市中小企業・小規模企業振興基本条例

令和元年12月20日

条例第73号

日向市は、天然の良港「細島港」や神武天皇お舟出の地として知られる「美々津港」などを有し、古くから海上交通の要衝として栄え、耳川流域の豊かな森林資源を全国に送り出す玄関口として、また、日向・東臼杵圏域の中心地として発展してきました。

戦後の高度経済成長期以降は、重要港湾「細島港」を中心に、港湾や高速道路の整備促進、物流機能の強化、企業誘致の推進など産業振興に積極的に取り組むことで、製造業をはじめとする多様な商工業が栄え、東九州を代表する港湾工業都市として成長しました。

また、温暖で豊かな自然環境を生かした農林水産業や観光産業も盛んであり、港湾を核とする活力あふれる商工業と豊かな自然が育む農林水産業や観光産業がバランスよく融合する住みよいまちとして更なる発展が期待されています。

このような本市産業の発展過程において、本市の企業の大部分を占める中小企業及び小規模企業は、地域経済と雇用の基盤を支えるのみならず、市民の多様な需要に対応した商品やサービスの提供、優れた技術や技能の伝承、地域の祭りや文化などの担い手としての貢献など、地域社会の発展と市民生活の向上に重要な役割を果たしてきました。

しかしながら、中小企業及び小規模企業を取り巻く環境は、地域間競争や国際競争の激化、産業構造や価値観の急速な変化、人口減少による市場の縮小、事業承継の困難化など極めて厳しい状況にあります。

このような中、本市の中小企業及び小規模企業が持続的に発展していくためには、中小企業及び小規模企業自らの創意工夫と努力により、産業構造や経営環境の変化に果敢に挑戦していくことが必要であり、私たち市民は、中小企業及び小規模企業の振興が本市の発展には不可欠であることを理解し、全市を挙げて応援し、支えていかなければなりません。

そこで、中小企業及び小規模企業の振興を本市の重要課題として位置づけ、施策を総合的かつ計画的に推進し、中小企業及び小規模企業の発展により市民が豊かで安心して暮らせるまちを目指すため、この条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は、本市経済における中小企業及び小規模企業(以下「中小企業等」という。)の役割の重要性に鑑み、中小企業等の振興に関する基本理念を定め、市の責務並びに中小企業等、経済団体、大企業、大規模小売店舗設置者等、金融機関、教育機関等及び市民の役割等を明らかにするとともに、中小企業等の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、本市経済の発展及び市民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 中小企業 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項に規定する中小企業者で、市内に事務所又は事業所(以下「事務所等」という。)を有するものをいう。

(2) 小規模企業 中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模企業者で、市内に事務所等を有するものをいう。

(3) 経済団体 商工会議所法(昭和28年法律第143号)第2条第1項に規定する商工会議所、商工会法(昭和35年法律第89号)第4条に規定する商工会その他地域経済の振興を行う団体をいう。

(4) 大企業 中小企業等以外の事業者(金融機関を除く。)で、市内に事務所等を有するものをいう。

(5) 大規模小売店舗設置者等 大規模小売店舗立地法(平成10年法律第91号)第2条第2項に規定する大規模小売店舗の設置者及び大規模小売店舗で営業する小売業者で、市内に事務所等を有するものをいう。

(6) 金融機関 銀行、信用金庫、信用協同組合その他の金融業を行う者で、市内に本店又は支店を有するもの並びに日本政策金融公庫及び宮崎県信用保証協会をいう。

(7) 教育機関等 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校及び職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第15条の7第1項に規定する公共職業能力開発施設をいう。

(8) 市民 次のいずれかに該当する者をいう。

 市内に住所を有する者

 市内に通勤し、又は通学する者

 市内で事業を営み、又は活動する個人又は法人その他の団体

(基本理念)

第3条 中小企業等の振興は、次に掲げる事項を基本理念として、これに基づき推進されなければならない。

(1) 中小企業等の自主的な努力及び創意工夫が促進されるものであること。

(2) 中小企業等が地域経済の発展及び雇用の創出に貢献し、地域社会の担い手として市民生活を支える重要な存在であるという基本的認識の下に行われるものであること。

(3) 国、県、市その他関係機関との連携及び適切な役割分担の下、中小企業等及び市民との協働により行われるものであること。

(4) 経済的社会的環境の変化に的確に対応するものであること。

(5) 自然環境、地場産品、人材、技術、産業構造その他本市が有する資源を総合的に活用して地域内の経済循環の促進が図られるものであること。

(6) 小規模企業の振興については、小規模企業の経営資源に大きな制約があることを踏まえ、その活力が最大限に発揮され、事業の持続的な発展が図られることを旨として行われるものであること。

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念に基づき、中小企業等の振興に関する施策を立案し、及び実施する責務を有する。

2 市は、中小企業等の振興に関する施策の立案及び実施に当たっては、国、県、経済団体、大企業、金融機関その他の関係機関との連携に努めるものとする。

3 市は、小規模企業の振興に関する施策を実施するに当たっては、小規模企業の経営の状況に応じ、必要な考慮を払うものとする。

4 市は、中小企業等が相互にその経営資源を補完することに資するため、中小企業等の連携及び事業の共同化の促進に努めるものとする。

5 市は、中小企業等が生産又は販売を行う商品・サービスの市内における購入促進を図るとともに、工事の発注並びに物品及び役務の調達に当たっては、予算の適正な執行に留意しつつ、中小企業等の受注機会の確保に努めるものとする。

(中小企業等の努力及び役割)

第5条 中小企業等は、自主的な努力及び創意工夫により、経済的社会的環境の変化への対応及び経営基盤の強化に努めるものとする。

2 中小企業等は、雇用環境の整備並びに雇用の維持及び創出に努めるとともに、事業活動に必要な人材の育成に努めるものとする。

3 中小企業等は、地域の関係者及び関係機関との連携に努めるとともに、市が実施する中小企業等の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

4 中小企業等は、地域社会の一員として地域社会への貢献及び市民生活の向上に寄与するよう努めるものとする。

5 中小企業等は、地域経済の振興を行う経済団体への加入等により、その活動に協力するよう努めるものとする。

(経済団体の役割)

第6条 経済団体は、中小企業等の経営の向上及び改善への支援に積極的に取り組むとともに、市が実施する中小企業等の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

2 経済団体は、中小企業等の起業及び創業並びに事業承継に対し、積極的な支援に努めるものとする。

3 経済団体は、中小企業等の組織化並びに相互の連携及び関係機関との連携を促進するよう努めるものとする。

(大企業及び大規模小売店舗設置者等の役割)

第7条 大企業及び大規模小売店舗設置者等は、中小企業等が、地域経済において果たす役割の重要性を理解し、中小企業等との連携を図るとともに、市が実施する中小企業等の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

2 大企業及び大規模小売店舗設置者等は、中小企業等との共存共栄を基に、地域社会の一員として、地域社会への貢献及び市民生活の向上に資するよう努めるものとする。

3 大企業及び大規模小売店舗設置者等は、中小企業等が生産又は販売を行う商品・サービスの積極的な活用に努めるものとする。

4 大企業及び大規模小売店舗設置者等は、地域経済の振興を行う経済団体への加入等により、その活動に協力するよう努めるものとする。

(金融機関の役割)

第8条 金融機関は、中小企業等の円滑な資金調達及び経営の向上を積極的に支援することにより中小企業等の振興に寄与するよう努めるものとする。

2 金融機関は、中小企業等の起業及び創業並びに事業承継に対し、積極的な支援に努めるものとする。

3 金融機関は、中小企業等が地域経済において果たす役割の重要性を理解し、市が実施する中小企業等の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(教育機関等の役割)

第9条 教育機関等は、社会見学、職場体験活動等の職業に関する理解を深める学習及び離職者又は在職者への職業訓練を通じて、健全な職業観及び勤労観の醸成並びに職業能力の向上に寄与し、地域の次世代を担う人材の育成及び地域内への就職促進に協力するよう努めるものとする。

2 教育機関等は、市が実施する中小企業等の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(市民の理解及び協力)

第10条 市民は、中小企業等が地域経済の発展及び雇用の創出に貢献し、並びに地域社会の担い手として市民生活を支える重要な存在であることを理解し、中小企業等が行う事業及び社会貢献に関心を持つとともに、その商品の購入又はサービスの利用などにより、中小企業等の健全な発展に協力するよう努めるものとする。

(基本方針及び実施状況の公表)

第11条 市は、次に掲げる事項を基本方針として、これに基づき中小企業等の振興に関する施策を推進するものとする。

(1) 中小企業等の事業活動を担う人材の育成及び確保を図ること。

(2) 中小企業等の経営基盤の安定強化及び事業承継の促進を図ること。

(3) 中小企業等への資金供給の円滑化を図ること。

(4) 中小企業等の起業及び創業並びに新たな事業の分野への進出の促進を図ること。

(5) 中小企業等が行う技術開発及び新商品・新サービスの開発の促進を図ること。

(6) 中小企業等の活用により地域内の経済循環の創出を図ること。

(7) 中小企業等による地域の農林水産物をはじめとする多様な資源、特性等を生かした事業活動の促進を図ること。

(8) 中小企業等の販路拡大及び取引拡大の促進を図ること。

(9) 中小企業等の国際的視点に立った事業展開の促進を図ること。

2 市は、前項に規定する基本方針に基づいて推進した施策のうち、主なものの実施状況を取りまとめ、毎年度公表するものとする。

(中小企業振興会議)

第12条 市は、中小企業等の実態を把握し、第2条各号に掲げる者から意見を聴くため、日向市中小企業振興会議(以下「振興会議」という。)を設置する。

2 市は、振興会議で協議された意見を尊重して、中小企業等の振興に関する施策を推進する。

3 第2条各号に掲げる者は、自主的な努力及び創意工夫により、振興会議で協議された意見、施策等の実現に努めるものとする。

4 振興会議の組織及び運営に関し必要な事項は、別に定める。

(財政上の措置)

第13条 市は、中小企業等の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

1 この条例は、令和2年4月1日から施行する。

2 日向市中小企業振興条例(昭和51年日向市条例第19号)は、廃止する。

日向市中小企業・小規模企業振興基本条例

令和元年12月20日 条例第73号

(令和2年4月1日施行)