○民間患者等搬送事業に対する指導及び認定に関する要綱
平成14年7月1日
告示第93号
目次
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 患者等搬送業務(第3条―第16条)
第3章 認定対象となる患者等搬送事業者(第17条―第30条)
第4章 雑則(第31条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この告示は、管内において患者等を搬送する民間事業者(以下「患者等搬送事業者」という。)に対し、必要な指導を行うとともに、一定の基準に適合する患者等搬送事業者の認定を行うことにより、患者等の生命及び身体の安全を図ることを目的とする。
(1) 患者等 寝たきり老人又は車椅子若しくは寝台を必要とする身体障害者及び傷病者をいう。
(2) 患者等搬送業務 患者等を医療機関、社会福祉施設等へ搬送するために必要な構造及び設備を備えた自動車(以下「患者等搬送用自動車」という。)を使用し、患者等を搬送する業務をいう。
(3) 患者等搬送事業者 患者等搬送業務を行う事業所の経営者又は管理責任者をいう。
(4) 適任証 消防長が、消防機関の実施する講習等を修了した者に交付するもので、患者等搬送用自動車乗務員としての資格の証をいう。
(5) 乗務員 患者等搬送用自動車に乗務し、当該業務に従事する者をいう。
第2章 患者等搬送業務
(患者等搬送業務の対象)
第3条 患者等搬送業務は、緊急の必要がない患者等を搬送対象とする。
(応急手当の実施)
第4条 患者等搬送業務は、患者等の症状の悪化防止に万全の配慮をしなければならない。ただし、搬送する途上において患者等の症状が悪化し緊急やむを得ない場合は、必要最小限度の応急手当を行うことができるものとする。
(業務の制限)
第5条 患者等搬送事業者は、パンフレット等の事業案内において、救急隊と同程度の活動ができる等市民等の誤解を招くおそれのある表示は避けなければならない。
(消防機関との連携)
第6条 患者等搬送事業者は、次の各号のいずれかに該当する場合は、患者等の場所、状態、既往症、かかりつけの医療機関等を消防機関に通報し、救急自動車の出動を要請するとともに当該救急隊員に協力しなければならない。
(1) 患者等から患者等搬送事業者に搬送の要請があった時点において、緊急に医療機関へ搬送する必要があるとき。
(2) 患者等搬送事業者が患者等の依頼場所に到着した時点において、緊急に医療機関へ搬送する必要があるとき。
(3) 患者等搬送事業者が患者等を搬送する途上において、緊急に医療機関へ搬送する必要が生じたとき。
(1) 別表第1に掲げる消防機関が行う講習を修了した者
2 適任証の有効期限は、交付の日から2年間とする。ただし、期限前に別表第3に掲げる定期講習を受講した者については、更に2年間有効とし、それ以後も同様とする。
(乗務員の要件)
第8条 乗務員は、満18歳以上の者で、前条第1項各号のいずれかに該当するものをもって充てるものとする。
(適任証の携帯)
第9条 乗務員は、患者等搬送業務に従事するときは、適任証を携帯しなければならない。
(運行体制)
第10条 患者等搬送事業者は、患者等搬送用自動車1台につき2名以上の乗務員をもって業務を行わなければならない。ただし、患者等の退院等を目的とした運行をする場合又は医師若しくは看護師が同乗する場合は、乗務員を1名とすることができるものとする。
(知識及び技術の維持管理等)
第11条 患者等搬送事業者は、患者等の安全搬送に関する知識及び技術を向上させるため、乗務員に対し積極的に研修及び訓練を実施し、その結果を訓練実施記録簿(様式第2号)に記録し、保存しなければならない。
2 患者等搬送事業者は、乗務員に対し2年に1回以上別表第3に掲げる定期講習を受講させなければならない。
(患者等搬送用自動車の要件)
第12条 患者等搬送用自動車は、次の各号に掲げる要件のすべてを満たすものとする。
(1) 十分な緩衝装置を有するものであること。
(2) 換気及び冷暖房の装置を有するものであること。
(3) 乗務員が業務を行うために必要なスペースを有するものであること。
(4) ストレッチャー、車椅子等を確実に固定できる構造を有するものであること。
(5) 自動車電話、無線機等の通信連絡に必要な設備を有するものであること。
2 患者等搬送用自動車は、サイレン又は赤色の警光灯を装備する等救急自動車と紛らわしい外観を有するものであってはならない。
3 患者等搬送用自動車の車体には、別表第4に掲げる患者等搬送用自動車である旨の表示を行うものとする。
(積載資器材)
第13条 患者等搬送用自動車には、別表第5に掲げる資器材を積載しなければならない。
(消毒の実施)
第14条 患者等搬送用自動車及び積載資器材は、次の各号に定める消毒を行わなければならない。
(1) 定期消毒 患者等搬送用自動車及び積載資器材を毎月1回以上消毒することをいう。
(2) 使用後消毒 患者等搬送用自動車及び積載資器材を毎使用後消毒することをいう。
3 前2項に定める消毒のほか、医師から特別な指示があったときは、当該指示に基づいた消毒を行わなければならない。
(衛生、安全管理等)
第15条 患者等搬送用自動車及び積載資器材については、点検整備を確実に行い、清潔の保持に努めなければならない。
2 乗務員の服装は、患者等搬送業務にふさわしいものとし、清潔の保持に努めなければならない。
第3章 認定対象となる患者等搬送事業者
(認定の対象)
第17条 認定の対象となる患者等搬送事業者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
(1) 一般乗用旅客自動車運送事業免許取得者
(2) 一般乗用(患者等輸送限定)旅客自動車運送事業免許取得者
(3) 一般貸切旅客自動車運送事業の免許取得者
(4) 特定旅客自動車運送事業の許可を受けた者
(5) 無償自動車運送事業の届出者
2 認定証等の交付を受けた認定事業者は、速やかに認定証等受領書(様式第11号)を消防長に提出しなければならない。
(認定証等の有効期間)
第21条 認定証等の有効期間は、認定を受けた日の翌日から起算して5年とする。
(認定の更新)
第22条 認定事業者は、認定の有効期間満了後も引き続き認定を受けようとするときは、当該認定の有効期間の満了する日(以下この項において「満了日」という。)の1月前から満了日までの間に消防長に更新を申請しなければならない。
(認定証等の再交付)
第23条 認定事業者は、認定証等を亡失し、滅失し、又は破損したときは、認定証等再交付申請書(様式第12号)により認定証等の再交付を申請することができる。
2 消防長は、前項の規定による申請があったときは、当該申請の内容を確認したうえ、必要と認めたときは、再交付するものとする。
3 認定証等の再交付を受けた認定事業者は、速やかに認定証等受領書を消防長に提出しなければならない。
(認定事業者の責務)
第24条 認定事業者は、患者等からの通報の適正処理及び搬送技能の向上に努めなければならない。
2 認定事業者は、患者等搬送事業の社会的責任を十分に自覚し、関連法規を遵守するとともに、指導及び認定に関する事項を誠実に履行しなければならない。
3 認定事業者は、患者等搬送業務中に当該業務の遂行に支障を及ぼす重大な事故が発生したときは、速やかに患者等搬送業務事故報告書(様式第13号)を消防長に提出しなければならない。
4 認定事業者は、患者等搬送業務の実績を記録し、毎年1月末日までに患者等搬送定例報告書(様式第14号)を消防長に提出しなければならない。
(認定事業者の調査)
第25条 消防長は、毎年1回以上認定事業者に対し、認定基準及び遵守事項の履行状況について調査するものとする。
2 消防長は、前項の規定による調査の結果、不適合な事項が認められたときは、認定事業者に対し、認定基準及び遵守事項に適合するように指導することができる。
(情報の提供等)
第26条 消防長は、認定事業者から患者等の診療機関情報等の照会を受け、必要があると認められる場合は、消防本部で把握している医療機関等の診療機関情報を提供することができる。
2 消防長は、市民等から患者等搬送事業者の照会を受けたときは、認定事業者を紹介することができるものとする。
(事業の休止等)
第27条 認定事業者は、患者等搬送事業の全部若しくは一部を休止し、又は廃止したときは、患者等搬送事業廃止(休止)届出書(様式第15号)を消防長に提出しなければならない。
(認定の取消し等)
第28条 消防長は、認定事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その認定を取り消すことができるものとする。
(1) 指導及び認定に関する事項を遵守しないとき。
(2) 当該業務の遂行にあたって、重大な事故を発生させたとき。
(3) その他消防長が認定を継続することが不適当と認めたとき。
(認定の失効)
第29条 認定事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その認定は効力を失う。
(1) 道路運送法(昭和26年法律第183号)に定めるところにより国土交通大臣の許可等が取り消され、又は失効したとき。
(2) 患者等搬送事業を廃止したとき。
(3) 認定の有効期間が満了したとき。
(認定証等の返納)
第30条 認定事業者は、前2条のいずれかに該当するに至ったときは、速やかに認定証等を返納しなければならない。
第4章 雑則
(委任)
第31条 この告示に定めるもののほか、必要な事項は、消防長が別に定める。
附則
この告示は、公表の日から施行する。
別表第1(第7条、第16条関係)
1 消防機関が行う講習
課目 | 時間 |
総論 | 1 |
観察要領 | 13 |
体位管理要領 | 2 |
消防機関との連携要領 | 2 |
車両資器材の消毒及び感染防止要領 | 2 |
搬送法 | 2 |
修了考査 | 2 |
合計 | 24 |
※ 課目の1時間は、45分とする。
2 講師
上記1に掲げる講習の講師は、次の各号のいずれかに該当する者をもって充てるものとする。
(1) 救急隊長として3年以上の実務経験を有する者で、消防長が適任と認めた者
(2) 消防大学校の救急課程の修了者で、消防長が適任と認めた者
(3) 消防大学校の救急課程の教官として2年以上の経験を有する者で、消防長が適任と認めた者
(4) 前各号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有する者と消防長が認めた者
3 乗務員の修了考査実施基準
修了考査は、次の内容とし、80点以上をもって合格とする。
区分 | 課目 | 配点 |
実技 | 観察要領及び応急処置 | 60点 |
筆記 | 消防機関との連携要領 | 20点 |
車両資器材の消毒及び感染防止要領 | 20点 | |
合計 | 100点 |
別表第2(第7条関係)
消防機関の行う適任者講習を修了した者と同等以上の知識及び技能を有する者
号 | 分類 |
1 | 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第44条に規定する救急業務に関する講習課程を修了した者 |
2 | 日本赤十字社の行う応急処置に関する講習を受けた者で、当該講習による資格の有効期間内の者。ただし、消防機関の行う適任者講習の課目に不足がある者は、消防機関が行う講習を受講しなければならない。 |
3 | 消防長が、前2号に掲げる者以上の知識及び技能を有すると認めた者 |
別表第3(第7条、第11条、第16条関係)
定期講習
課目 | 時間 |
観察要領及び応急措置 | 2 |
体位管理 | 1 |
合計 | 3 |
※ 課目の1時間は、45分とする。
別表第4(第12条関係)
患者等搬送用自動車の表示方法 | 1 文字は、ペンキ等を用いて車両の両側面に横書きで表示すること。 2 文字の大きさは、縦横ともに50ミリメートルとし、「民間患者等搬送車」と表示すること。 3 患者等搬送用自動車認定マークは、車両後面の見やすい位置に添付すること。 |
備考 上記1及び2については、車両を更新する場合にも適用する。 |
別表第5(第13条関係)
患者等搬送用自動車に積載する資器材
項目 | 資器材名 |
呼吸管理資器材 | バッグマスク、ポケットマスク |
保温用資器材 | 敷物、保温用毛布、担架、まくら |
創傷等保護用資器材 | 三角巾、ガーゼ、包帯、タオル、ばんそうこう |
消毒用資器材(車両及び資器材) | 噴霧消毒器、各種消毒薬 |
その他の資器材 | はさみ、マスク、ピンセット、手袋、膿盆汚物入れ、体温計 |
別表第6(第14条関係)
1 消毒の実施要領
消毒の種類 | 消毒の対象となるもの | |
積載資器材 | 患者等搬送用自動車 | |
定期消毒 | ① 薬品等を使用して、定期的に殺菌し、消毒をして適正な管理を行う。 ② 窓等を開放して日光による消毒を行う。 | 車両の外側は水洗いし、車内は薬品等を使用して、有効な消毒に努める。 |
使用後消毒 | 汚染された資器材について、水道水で洗浄後に薬品等を使用して消毒を行う。 | 血液や吐物等で車内が汚染された場合は、水道水で洗浄後に薬品等を使用して消毒を行う。 |
その他 乗務員は、搬送業務終了後に、手指及び口腔内を消毒すること。 |
2 手指及び積載資器材の消毒の実施要領
薬品名 | 使用時の濃度 | 消毒方法等 | |
手指 | 積載資器材 | ||
消毒用エタノール | 70% | 適 | 清拭、浸漬 |
グルコン酸クロルヘキシジン | 0.1~0.5% | 適 | 噴霧、清拭、浸漬 |
アルキルポリアミノグリシン | 0.1~0.3% | 適 | 噴霧、清拭、浸漬 |
クレゾール石けん液 | 2% | 適 | 噴霧、清拭、浸漬 |
ホルマリン | 0.5~1.0% | 不適 | ガス |
備考 HBウィルス等の汚染が推定される場合は、次亜塩素酸ナトリウム等で消毒すること。 |