広報ひゅうが平成28(2016)年3月号
羽坂のお大師さん

東郷町羽坂区の「大師堂」
私たちの身の回りの道路の脇や、集落の中などで、シキミやお花があげられている石塔や石仏を見かけることがよくあります。
そのなかでも弘法大師「空海」を祀る大師像は、多くの人に親しまれている石仏の一つです。
弘法大師は、真言宗を開いた平安時代初期の僧侶で、大師にまつわる伝説は全国にあるといわれ、本市のお倉ヶ浜と金ヶ浜にもハマグリ伝説が語り継がれています。中でもゆかりの地を辿る四国八十八ヶ所巡りは、大師信仰の高まりとともに盛んになり、その後、全国各地に大小さまざまな巡礼地がつくられていくことになります。
日向市では大正10(1921)年に幡浦牧島山を霊場として開山したことが有名ですが、これより前、大正4(1915)年に東郷町羽坂でも開山。ここに奉納されている大師像は、東郷町の鶴野内・田野・仲深・坪谷・越表地区のほか、美郷町鬼神野地区のものもあるなど、信仰の広がりがうかがえます。
旧暦の3月2日に行われる「お大師さん」では、東郷町成願寺住職が先導して大師堂を出発、羽坂地区の要所に安置されている88体の大師像を巡礼します。大師堂に戻ると般若心経をあげて線香を焚き、赤飯や煮しめで会食をします。
この羽坂地区に限らず、「お大師さん」では、かつて道行く人をやや強引に引き込んで接待することが、暗黙の慣わしでした。これは外から来た人を温かく迎え、心を込めて接待する「外者歓待」の考え方とも通じています。
かつてハマグリで大師をもてなしたことで、お倉ヶ浜に幸福と繁栄がもたらされたという習俗によるものと思われますが、接待された人は、もしかしたら大変だったのかもしれません。