広報ひゅうが平成28(2016)年1月号
東郷町八重原地区上の原遺跡

穿孔のある石製品出土状況
上の原遺跡が所在する東郷町八重原地区は、目前に耳川が流れ、細長い集落の背後には大規模な段丘が形成されています。
遺跡はこの高台に立地しており、今年度、発掘調査を実施しました。
調査ではまず、重機で表土をはぎ取る作業を行ったところ、およそ7300年前の鹿児島県南西部カルデラを噴出源とするアカホヤ火山灰が検出、さらにその下の地層からは縄文時代早期の土器や石器が出土しました。
土器は主に押型文土器と呼ばれ、主に調理などに使われていたもので、連続する山形や楕円形の模様を刻み込んだ棒を土器の器面に押し付けて模様がつけられています。
次に、石器は狩猟に使用する弓矢などの鎌が出土しました。石器は、遺跡の周辺で採集が可能な岩石を原石とするものがほとんどですが、なかには産地が遠隔地と考えられる黒曜石も使用されていました。
このほか遺跡では、握りこぶし程度の大きさの焼け石が集中する集石遺構10基や内部に焼かれた土が残る炉穴20基が検出されました。これらは調理施設として使われていたことが想定されています。なお、この炉穴からは、石に穴をあけた装飾品らしきものも出土しました。
今回は一部(およそ800u)だけの調査でしたが、多数の遺構や遺物を発掘、記録保存することができました。
耳川流域における縄文時代の文化を解明していくうえで、貴重な成果が得られました。