広報ひゅうが平成26(2014)年8月号

地名にまつわる地形の特長


図書館にある地名に関する書籍(一部)


 日本大震災で甚大な被害をうけた宮城県石巻市の地名について、江戸時代に書かれた『石巻村風土御用書出』には、「当村の住吉大明神神社の脇に、石巻石と言うものがあり、石巻の地名はそれにちなんで付けられたものである」と書かれています。
 また、この石については「奥羽観跡聞老志」に、「その形は成人男子の正装に使う烏帽子に似ている」とあります。現存する石巻石は、長さ約3メートル、幅90センチメートル、高さ2メートルの巨石で、大部分は海中に没していて、烏帽子に見える部分だけが海面に出ているようです。
 災害史の研究者によると、石巻石は「津波に襲われると、この石を中心に渦が巻く」ことから付けられた災害の記憶を後世に残すためのモニュメントだともいわれています。
 こうした災害に由来する地名は私たちの周りにも結構多いものです。
 たとえばクサバやヒラなどは崩落しやすい岡や崖地に多い地名です。また、ワダ、アカ、カジ、ウラなどは、水分を多く含む土地で土石流が発生しやすい谷状の地形を示しています。
 さらに、ナゴラ、ナギ(土石流が発生しやすい)、ヌク(低湿地で地滑りが発生しやすい)、コウ(地下水が多い)、カコイ(露岩、転石が多い)、クボ(窪地・水が溜まりやすい)、ヌク(土石流が堆積している山麓)など、土地そのものの性質を表す地名が多くあります。特にアマリの地名は津波の危険性が高い所に付けられているといわれています。
 こうした地名が、どれもこれも災害の歴史を示しているとは限りませんが、注意だけはしておきたいものです。
 詳しいことが知りたい方は、一度、市立図書館で調べてみてください。

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