広報ひゅうが平成25(2013)年8月号
自然への畏敬の念に隠れたメッセージ-民間信仰から学ぶこと(八大竜王碑)

米ノ山の八大竜王碑
絶景で知られる日向岬をはじめとする本市の大部分は尾鈴酸性岩類と呼ばれる鉱物の岩盤からできています。
尾鈴酸性岩類については、つい最近まで詳しいことは知られていませんでしたが、およそ1600万年前に、今の日向岬の南東沖に出現した海底火山の噴火によって生じたものであることがわかりました。
当時、まだ人類は現れていませんので、そうした恐ろしい光景を目にした記憶を伝えるような人はいませんが、西都市立図書館に収蔵されている江戸時代の「日向神代絵図」を読むと面白いことがわかります。
この絵図は、要するに古事記・日本書紀に登場する神々やその由緒地を描いたもので、たとえば櫛の山は、高千穂峰に降臨したニニギノミコトが初めて四方を見渡した「千畳敷の磐石あり」などと書かれています。
これは、おそらく大御神社の境内にある神座の巨石のことと思われますが、一昨年、そのすぐ傍から「竜神の卵」ではないかと考えられる巨石と駆穴が発見されています。
ところで、民俗学では竜神は水との関わりが深く、特に八大竜王(はちだいりゅうおう)は、「法華経」に登場し、仏法とその信者を守護すると考えられています。
市内で八大竜王と言えば、米の山展望所の傍にある石碑が有名ですが、他にも平岩の舟人に竜王を祭る石碑があり、また門川町との境にある南町の海岸のつけ根に鎮座している「和霊様」も「日向神代絵図」では「竜王権現」と書かれています。
これらは、地震や津波、台風などの自然災害と向き合ってきた先祖たちが、私たちに残してくれた警告のメッセージなのかも知れません。