広報ひゅうが平成24(2012)年3月号
小浜利兵衛のお地蔵さん

寺迫地区庭田にある地蔵菩薩座像
美々津町の百町原は本市を代表する穀倉地帯で、この時期(毎年5月)は田植えのすんだ水田がキラキラ輝いて、吹き抜ける風も爽やかです。
さて、百町原の西には尾鈴山系の山が連なり、所どころに緩い斜面や段丘と呼ばれる平らな場所があります。
今回、紹介するのは、そうした地形の場所にある石造のお地蔵さんたちです。
まず、上落鹿のお地蔵さんは、高さ95センチメートル。四角い基礎石の上に蓮弁と呼ばれる台座と延命地蔵のお姿をした座像が載っています。左手に宝珠、右手に錫杖を持つ典型的なお地蔵さんです。次に、庭田と小浜にも同じ姿形をしたお地蔵さんの石仏があります。
実は、これらのお地蔵さんは「小浜利兵衛」と言う人が施主となり、宝暦10(1760)年に建立したもので、昭和53(1978)年に文化財の指定を受けています。
お地蔵さんは、人びとを慈悲の心で包み込み救ってくれるとか、あの世の道案内をしてくれると伝えられ、墓地や集落の境に建てられることが多い石仏です。上落鹿、庭田、小浜の場合もそうした場所に建てられています。ただ、施主、すなわちスポンサーである「小浜利兵衛」がどんな理由から、これらの土地にお地蔵さんを建てたのか、詳しいことは、まだわかっていません。
また、これらのお地蔵さんは専門の仏師が製作したものではないようです。おそらく、仏教や仏像に関する知識をある程度持っていた地元の修験者たちが苦心して作り上げたものではないかと考えられます。
いずれにしても、250年も前から、それぞれの地域を代表する石仏として人びとに信仰され、また親しまれてきた貴重な文化財であることに変わりはありません。
日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。