広報ひゅうが平成23(2011)年12月号

仲深地区「西林山」*


大雨のあとは、切り立つ崖に滝が現れる


 道の駅「とうごう」から、国道446号線を美郷町南郷区方面に向ってしばらく進むと、「仲深橋」のバス停があります。これを目印に左折すると、正面に切り立った崖の岩肌の「西林山」が姿を現します。
 西林山は標高786メートル余りで、山頂まで片道3時間ほどのキツい登り坂が控えています。登山愛好家の間では、自然林の中を通ったりシダの藪を通ったり、周辺に大小さまざまな滝があるなど変化に富んだ登山コース、トレッキングルートとして人気があり、また、登山道の一部は元禄4(1691)年に起きた山陰一揆の逃散ルートであったことでも知られています。
 ところで、西林山の名については、美々津町田ノ原の石神山の真西に位置することから付けられたとも言われていますが、最近の調査研究によって、修験道に関わりのある地名であることがわかってきました。
 例えば、和歌山県にある那智大社に残されている江戸時代の記録に、同社の支配下にあった日向国の修験道場の一つに「つほや(坪谷)」があり、「西林坊」という宝物小屋のあったことが記されているようです。つまり西林山は修験道に由来する地名の可能性が高いのです。その視点から山容を見渡すと、北側の岩場を斜めに通る細い崖道痕跡が見えます。修験者だけに登り降りを許された道でしょうか。詳しいことは今後の調査で明らかになるでしょう。
 ただ、石神山との関係も無視することはできません。四国の霊峰として知られる石槌山の真西にも西林山という山があるのです。四国といえば八十八か所巡りの霊場が有名ですが、修験道も盛んで、石槌山も険しい地形から道場として使われてきました。
 これからの西林山に関する調査については大いに注目していてください。

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