広報ひゅうが平成22(2010)年12月号
東郷町地域に伝承されている神楽

福瀬神社に奉納される福瀬神楽
記録的な猛暑に見舞われた夏も終わり、各地から秋祭りの便りが届く季節になりました。
民俗芸能の専門家によると、神楽は集落単位で挙行される地域性の強い芸能で、県内で約350地区に伝承されているようです。神楽には、もっぱら昼に舞う「春神楽」と、夜を徹して舞う「冬神楽」、それに折衷型ともみられる「半夜神楽」があり、高千穂や椎葉の夜神楽は全国的に知られています。
市内では、東郷町の福瀬、小野田、迫野内、八重原、羽坂、田野、坪谷、越表の各地に神楽が伝承されていて、いずれも市の民俗芸能に指定されています。神楽は、毎年、10〜11月に挙行される各地の神社の大祭に奉納されていて、神殿に加え「郷まわり」と称して地区内各所へ移動し舞われるのが一つの特徴です。
東郷地区の神楽の中には、高鍋系(比木神社系)神楽に属するものがあると言われています。比木神社と言えば、昔、朝鮮から亡命してきた百済王族の福智王が祭られていて、同じく美郷町南郷区の神門神社に祭られている父親の植嘉王のもとへ年に一度旅をする「師走祭り」が有名ですが、東郷地区の神楽の多くが、そのルート沿いに点在していることには注目してよいでしょう。一方、各地の生業や地理的見地から県内の神楽を沿岸(近海漁労)神楽圈、平地(稲作畑作)神楽圏、山地(焼畑狩猟)神楽圏の3つに分類する研究者もいて、東郷地区の神楽は平地神楽圏に含まれることになります。 神楽などの民俗芸能は一度途切れてしまうと、もとへ戻すことは容易なことではありません。
私たちは、民俗芸能が地域の歴史を物語る文化財であると同時に、地域のシンボルであることを今一度、確かめておきたいと思います。
日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。