広報ひゅうが平成22(2010)年2月号

坪谷地区平田の「おいたて」


おいたての祠(ほこら)と石組み


 木城町比木神社と美郷町南郷区神門神社で行われる師走祭りは、日向市にとっても大きなかかわりを持つ祭りといえるでしょう。
 今回は百済王が敵に追い立てられた場所という伝説が残る東郷町坪谷地区にある「おいたて」の地を紹介します。
 坪谷川支流の瀬平川を上っていくと河川沿いに田畑や家屋が点在する平田という集落にたどり着きます。ここから越表地区の中水流に通じる山道があり、以前は比木神社一行もこの山道を往来し、「おいたて」で神事を行っていました。
 山道を登ると途中に上下2段に整地された平地があります。上の段は5メートル×4メートル程とやや手狭ですが、神庭として神事や神楽が行われていたといいます。4基の祠と石組みが周囲を囲い、隅には石柱が立てられ、意図的に空間が区切られています。下の段は10メートル×5メートル程の面積とやや広く、直会が行われていたようです。
 また、祠のある石組みの背面は一見自然の尾根地形のようにもみえますが、よく観察すると人の手による地形の変化に気付くことができます。やや急な尾根を登りきって傾斜がゆるくなったところに、尾根を掘り切って溝を掘り、さらに尾根の高まりの周囲に円を描くように溝を設けています。まるで古墳の周溝のようにもみえるもので、何かしらの塚であることも考えられます。現在は比木神社一行が立ち寄ることもなくなって久しく、いわれなどの詳細は不明なようです。
 このほかにも東郷町内には百済王の伝説地が多くあり、比木神一行が通過する際に方々に立ち寄って神事が行われていましたが、戦後生活の変化や自動車の発達に伴って、次第に省略されるようになり、その文化が忘れ去られようとしています。

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