広報ひゅうが平成21(2009)年11月号
中水流の荒神社(こうじんやしろ)*

中水流荒神社跡の基壇(空中写真)
道の駅とうごうの近くに立地する富乃露酒造店(現在は「あくがれ蒸留所」)。旧東郷町が誘致企業として招いた企業で、本格焼酎「日向あくがれ」などを醸造しています。今回は、その工場用地造成に伴って平成15(2003)年に実施した発掘調査の成果を紹介します。
当時、造成予定地には荒神(こうじん)さまが所在していましたが、着工前に羽坂神社境内に遷宮しました。荒神さまは鶴野内にあったにもかかわらず、不思議なことに耳川を挟んだ羽坂神社(祭神は伊邪那岐命(イザナギノミコト)・速玉男命(ハヤタマオノミコト))と関係が深く、毎年ある羽坂神社の祭礼には必ず代表者が参拝する慣わしとなっています。
調査時、すでに社は失われていて御神木だけが神さまの存在を示していました。しかし埋土を取り除いていくと、社の基壇(きだん)を構成する礫群(れきぐん)が姿を現しました。基壇は約8×6メートルの長方形で、拳大(こぶしだい)から頭大の石が1メートルほどの高さに積み上げられていて、中央部には地鎮のための鎮壇具(ちんだんぐ)として唐津焼の甕が奉納されていました。鎮段具には宝物類などが納められるのが一般的です。しかし、ここでは扁平な小石が15個ほど入れられ、石の蓋がされていました。
埋土からは18世紀末から現代に至るまでの陶磁器片が出土、この間継続して信仰されていたことがうかがえます。また、白狐の人形片も出土し、稲荷大明神を合祀していたことが想定できそうです
京都の祇園社(八坂神社)では荒神を牛頭天王(ごずてんのう)の眷属神(けんぞくしん)としています。羽坂神社境内にも祇園社がありますが、鶴野内神社では牛頭天王を本地仏とする素戔鳴尊(スサノオノミコト)を祭神とし稲荷大明神も合祀するため、祭神だけで判断すると羽坂神社よりも鶴野内神社のほうがより近い関係にあるといえそうです。羽坂神社と鶴野内神社は、荒神をめぐって何かしらの縁がありそうですね。