広報ひゅうが平成21(2009)年10月号
財光寺比良の庚申塔

財光寺比良の庚申塔
財光寺比良地区にある比良コミュニティセンターのよこには、地元の人たちから「オコシンさん」と呼ばれている古い石碑(庚申塔)が建っています。
高さ1メートル、幅50センチメートルほどの石碑の正面には青面金剛の姿が彫られ、左側面には「文政元(1818)年寅十二月」の年号と「村」「三太夫」の文字が刻まれています。青面金剛は、江戸時代に流行した庚申信仰の本尊で、悪鬼や病魔を退治してくれる神さまとして、当時の人びとに親しまれていました。
庚申信仰では、60日に1回まわってくる庚申の日の晩に、人の体内から虫(三尸(さんし)の虫)が抜け出して天に昇り、その人の日ごろの悪事や過ちを天帝に告げ口をする━━と信じられています。
そのため、人びとは天帝の罰を受けて寿命を縮められるものと考えていました。そこで庚申の晩には、みんなで集まって、世間話や、牛馬の肥育、農作業のことなどを徹夜で語り合い、眠らないようにしました。これが庚申講と呼ばれる集会です。
当時は、庚申信仰のシンボルとなる庚申塔を参加者たちが資金を出し合って建てることが多かったようです。
また、比良地区のように親しみを込めて「オコシンさん」と呼ぶところもあれば「コウシンさま」「コシンどん」などと、呼んでいるところもあります。
私たちは、信仰という言葉を聞くと、すぐに仏教や神道などを思い浮かべてしまいがちです。しかし実際には庚申信仰や水神信仰のように、庶民の生活と深く結びついている信仰のほうが多かったようです。
いずれにしても、比良の庚申塔は、江戸時代に生きた人びとの素朴な信仰や当時の暮らしを探るうえで、欠くことのできない貴重な文化財といえるでしょう。