広報ひゅうが平成21(2009)年3月号
福瀬の「崎山大師堂」

崎山大師堂
東郷町福瀬区の集落から山を越えて広瀬へ向う古い道。その峠付近に「崎山大師堂」があります。
現在ではあまり人通りがない道ですが、お堂は今でも地元福瀬の人たちの手によってきれいに整備されています。
「崎山大師堂」のお堂には基壇の上に弘法大師像3体が安置されています。建立された年代は不明ですが、そばに奉納された10基の燈篭には文政7(1824)年〜天保2(1831)年の年代が刻まれていて、そのころのものではないかと推測されます。
寄進者の住所として美々津・塩見村・田代邑とあり、地元以外の人からも厚く信仰されていたことがうかがえます。
大師像下の基壇には、小石に経文を一文字ずつ墨書(ぼくしょ)したものが奉納されています。「一字一石経(いちじいっせききょう)」は通常法華経を書写した石を埋納しその上に石塔を建立するものが一般的です。また奉納した基壇の上には大師像が安置してあり、真言宗系の影響を受けているようです。
この大師堂は、門川の永願寺を出発し、日向・東郷・延岡の霊場を巡る「日向四国札所」の札所と推定することもできるようです。当時の順番表を見ると、東郷町近辺でのお遍路の道順は、水月寺→永田(永照寺)→成願寺→迫野内(天道山)→八重原(大神山)→羽坂(遍明山)→福瀬(金剛山)→鳥川(清流山)→幸脇(妙智山)となっています。
昭和初期には盛んにお遍路が参っていたようですが、現在は薄れてしまい存在自体が忘れ去られようとしています。
何気なく安置されたような路傍の石仏にも、多く人の切なる祈りや願いが懸けられているものなのですね。