広報ひゅうが平成21(2009)年1月号
越表地区の「立岩橋」

立岩橋
立岩橋は、東郷町下三ヶを通る国道446号沿いに所在し、小丸川へ注ぐカギ谷川にかかる石造アーチ橋です。
石造アーチ橋は全国に千八百基ほどあり、その95%が九州に集中しています。なかでも熊本県や大分県に多くあり、県内では170基ほどが確認されています。
国道446号は、明治34(1901)年に富高新町から美郷町南郷区まで開通した県道神門(尾崎細島港)線が前身です。耳川の船便「高瀬舟」とともに入郷地区の物資を港町まで運搬する主な搬出路で、細島港や美々津港といった港町の繁栄に大きく寄与しました。民俗学者の柳田國男が椎葉を訪れて「後狩詞記(のちのかりことばのき)」を記しますが、椎葉村へはこの県道を利用して入村したようです。
明治末期の暴風雨で東郷町内の木橋がほとんど流失したため石橋へ架け替えられたと「東郷町史」で記されています。立岩橋もこれらと同じ時期となる明治43(1910)年に架橋されています。立岩橋は単眼の石造アーチ橋で、当時としては新しい工法となるセメントを使用した布積みで建造されています。輪石や橋脚の隅石などは「江戸切り瘤(こぶ)出し」と呼ばれる技法で丁寧に細工されていて意匠的でもあります。
災害対策のためか、基礎となる部分は自然の岩石から積み上げられ、壁石は断面が台形を呈するよう勾配をつけて安定させ強度を増しています。
さらにアーチを架ける起拱石(ききょうせき)の下には10段の基礎石を積んでアーチに高さを出しており、増水時にも水につかりにくい構造になっています。
これらの工法で架橋された立岩橋は、九州における宮崎の石造アーチ橋文化を考察していくうえで貴重な文化財であるといえるでしょう。