広報ひゅうが平成20(2008)年10月号
米ノ山八大龍王

米ノ山展望所「八大龍王」の石碑
米ノ山展望所の西にある林の中には、高さ1メートルほどの岩がたくさんならんでいます。南側の一角には祭壇が築かれていて、高さ約2メートルの柱状岩が祭られています。
この柱状岩には、八大龍王や元治2(1865)年の年号などが刻まれていて、昔から海上安全や豊漁のご利益があるといわれています。
大正時代、日向の地を訪れた考古学者の鳥居龍蔵は、この岩がヨーロッパや西南アジアの古代史上にみられる巨石信仰の一例だと考え、当時の学界に発表しました。
また、この付近は、富高古墳9号から12号古墳の所在地として、県の史跡に指定されています。しかし、今ではどこが墳丘なのかわからなくなってしまっています。
いずれにしても、米ノ山の頂上は、昔から何か特別な意味を持つ場所だったと見て、まちがいないでしょう。
米ノ山の頂上に登ると、海を遠くまで見わたすことができます。
逆に沖合いを航海する船からは、波間に見え隠れする米ノ山が、絶好の目標になります。山を目印にして、船の位置を確認したり、航路を決めたりする方法は今でも行われていて、「山合わせ(ヤマアワセ)」などと呼ばれています。このような航海術は古代から行われていたようです。
八大龍王の石碑は、江戸時代に米ノ山が、海にまつわる信仰の対象であったことを示しています。かつてここに古墳群が築かれていたことを考えあわせると、その信仰のルーツは、遠い古代に求められそうです。
当時の米ノ山は、ヤマアワセの航海に欠かすことのできない、神聖な場所だったのでしょう。