広報ひゅうが平成20(2008)年4月号

寺迫の地蔵菩薩像


地蔵菩薩像(小浜)


 東郷町寺迫地区にある地蔵菩薩像3体は、市の文化財として指定されています。
 地蔵菩薩は、六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)を回って人びとを救うとされ、道の辻や境界などに置かれているのが多く見られます。また、親に先立った子どもを賽の河原で救うともいわれ、昔から庶民の間で深く親しまれてきました。指定の像は、今も建立当時の道沿いに分散して置かれていて、まるで道行く人々の安全を見守っているかのようです。
 地蔵菩薩像3体の造立年代・像容・台石・石材などはいずれも同じで、江戸時代の宝暦10(1760)年に小浜理兵衛(こはまりへい)という人物が奉納したものです。
 1体目の地蔵は、庭田地区の小浜にある共同墓地にあります。理兵衛についての詳細は不明ですが、理兵衛の墓とされるものが共同墓地にあり、また小浜という名字からも、この地に縁ある人でないかと推察されます。
 理兵衛は、地蔵菩薩を奉納しただけではなく、理兵衛の墓といわれる墓石に十一面観音菩薩像が彫られていることからも、仏教への信心があつかったこともうかがえます。
 2体目の地蔵は、上落鹿地区の尾根筋を庭田へ登る道の突端にあります。美々津港が繁栄していた明治期は、港へ荷物を運搬する人馬の行き来が盛んな土地でした。
 現在、使われていない道ですが、馬の蹄によって深く削られ、身の丈以上の深い道が今もなお残っています。
 3体目の地蔵は、庭田地区の山中にあります。この付近では昭和20(1945)年の終戦直後、軍が廃棄した爆弾によって、3人の学童が亡くなるという痛ましい事故が起こりました。
 平成9(1997)年には地区の人たちの手によって、その現場に慰霊碑が建てられています。現在も近くにある地蔵菩薩とともに地域の人たちに手あつく供養されています。


日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。

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