広報ひゅうが令和5(2023)年8月号
東郷町越表地区出土の壺

東郷町越表で出土した壺
写真の土器は、昭和36(1988)年頃に東郷町越表の八ッ山地区から、圃場整備のときに出土した壺です。土器には、縄文土器、弥生土器、須恵器、土師器などの種類があり、煮炊きや貯蔵、盛り付けなどの用途や形状に応じて、壺、甕(かめ)、坏(つき)などさらに細かく分類されます。壺は食料の貯蔵に使用されたと考えられています。
この壺は全長25p、全幅15p、口径9.5pを測り、全体の中央付近に最大の膨らみを持ちます。口の部分は細く短く絞られ、ほぼ直角に立ち上がっています。底部はやや丸みを帯び、先が尖っています。
内面、外面ともにベージュがかった黄色をしており、外面にはヘラなどで調整を施す「ミガキ」の痕跡が縦方向に、内面には指や布、動物の皮などで調整する「ナデ」のが横方向に入っています。黒く変色している部分は、土器を焼き固める際の煤が残ったものです。また、その時とは別の煤も付着しており、使用する過程で煮炊きなどに転用したのでしょう。
市内で出土した土器の形状や、付近の遺跡の状況から古墳時代前期頃の遺物だと考えられます。越表地区の古墳時代の文化を知るうえで貴重な資料となりそうです。
市内には、このような土器や人々が生活した痕跡が埋まっている「埋蔵文化財包蔵地」が250か所近くあり、必要に応じて教育委員会が発掘調査を実施しています。調査終了後は記録を報告書としてまとめ、大学や研究機関などで活用されます。土木工事や住宅工事などの際、該当地が埋蔵文化財包蔵地内の場合があります。文化財保護法第35条により、着工の60日前までに文化庁長官に届け出ることが義務付けられています。不明な点は文化財係に問い合わせてください。