広報ひゅうが令和3(2021)年10月号

耳川に描く2連のアーチ−美々津橋


美々津橋


 耳川の河口に架かる美々津橋は、昭和9(1934)年に竣工した2連のアーチ橋で、長さはおよそ168メートルあり、平成9(1997)年には市有形文化財に指定されています。
 美々津橋が架かるまで幸脇・美々津間は、大正10(1921)年に富高・美々津間が開通した鉄道の他は、渡し船(美々津渡船)しかありませんでした。しかし、渡し船は洪水や風、波の強い時には運航されず、また、物資輸送や交通量の増加にも対応できないなどの課題もあり、美々津橋の建設が決定します。
 橋は、増田淳(ますだじゅん)氏が設計しました。スパンドレルブレースト・アーチ橋と呼ばれるもので、アーチとその上に支えられる橋床を含む面全体の鋼材を三角形に組んでいます。
 建設工事は昭和6(1931)年に始まります。当時、世界恐慌の影響で不況に苦しんでおり、失業救済事業の一環で地元の人々を雇い工事が進められました。
 橋の位置を巡っては、現在の位置より東側の河口の渡船場近くを求める声も強く、美々津町では昭和7(1932)年1月、町民大会が開催され現在の位置での架橋に反対する決議も行っています。しかし、県は川幅の狭い現在の位置が経済的であるとして計画変更には応じませんでした。
 橋は昭和9(1934)年3月に竣工します。4月11日には、君島県知事ら2000人が出席した竣工式が行われ、式典後には、美々津小学校で祝賀会、権現崎公園で園遊会も催され、盛大に完成を祝いました。
 その後、昭和4(1967)年2月に美々津大橋(国道10号)が開通したことで、美々津橋の交通量は減りましたが、現在も補修を受けながら地域の交通を支えています。


日向市文化財でも紹介しています。ご覧ください。

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