広報ひゅうが令和3(2021)年2月号
塩見・永田地区のナカシマサン

華智王を祀る伊佐賀(いさか)神社
塩見永田地区を通る国道327号の北側の田んぼの中に、1本の柳の木が立っている小さな塚があります。田んぼの中に木が生えている不思議な光景が気になっている人もいるのではないでしょうか。
この塚について、『日向市史民俗編』に次のような地元の方の話が掲載されています。
いつの時代かはわかりませんが、大水が出たとき、駕籠に乗った武士(山伏との話もある)が、切通川沿いの道を通り、小道川を渡ろうとしました。そのとき、駕籠を担いでいた者が足を滑らせてしまい、駕籠から武士が落ち、そのまま下流へ流されてしまいます。流された武士は、樋の元という場所の橋桁に引っかかっているところを発見されます。しかし、すでに亡くなっていたため、その武士の遺体を運び祀った場所が「ナカシマサン」ということです。
以上がナカシマサンにまつわる言い伝えです。
かつてこの塚は1.5坪ほどの広さで石組の小高い塚だったそうですが、現在は石組を取り去り、170センチメートル四方になっています。また、直径20センチメートルほどの神木も立っていたということですが、枯れてしまったため、代わりに榊の木が植えられています。
ナカシマサンは「塚神」と言われる種類の民俗神です。塚はツク(築く)から変化した言葉とも言われます。人工的な塚が造られたのは、もともと山や丘を聖地と崇めていたものが、何らかの理由で模擬的にその形を小規模に造って神霊を祀る場としたからともされています。
ナカシマサンは、これからも実る稲穂とともに田んぼの中から地域を見守ってくれることでしょう。