広報ひゅうが令和2(2020)年9月号
新ひむかまちづくり塾「美々津軒」

美々津軒
美々津は懐深い天然の良港であることから、江戸時代には高鍋藩の商業港として重要視され、藩の番所や蔵のほか藩士たちの屋敷も置かれていました。
江戸時代の末期になると廻船業によって富を蓄えた商人たちが下級藩士の土地や屋敷を次々と買収して店を構えるようになり、繁華街に姿を変えていきます。やがて明治時代になると商人たちは文明開化の波に乗ってますます富を蓄え、大きな店を建てるようになりました。
こうした時代背景の中、美々津軒も明治17〜18年ころに建てられています。はじめ廻船問屋が営まれ、後に商家として利用された建物は、美々津でも指折りの重厚な町家といえるでしょう。
美々津軒の間口は広く、玄関から裏庭まで続く土間(通り庭)に沿って「店の間」「座敷」「茶の間」など3室を置く形式は一般的なものですが、さらにその北側にもう一棟を増築して3室を配置しています。
「座敷」は床の間や違い棚、欄間など意匠的に装飾されていますが、特別なお客をもてなす「奥座敷」では、清楚な中庭を眺めることができ、格式高い落ち着いた空間をつくりだしています。また、箱階段や吹きぬけなども美々津の特徴をよく表しているといえるでしょう。
昭和56年に開館した「新ひむかまちづくり塾『美々津軒』」は、建造物としての文化財の見学施設として一般に開放するとともに、まちづくりの拠点の一つとして、これまで数多くの研修や学習会、文化的事業を行う場として活用されてきました。地域の活性化のみならず美々津を広く発信することができる施設として、これからもその役割が大きく期待されるところです。
ぜひ、皆さんも美々津軒を訪れ、美々津の風情や人情に触れてみてはいかがでしょうか。