広報ひゅうが平成30(2018)年11月号

お倉ヶ浜と金ヶ浜


ハマグリにまつわる民話が残る金ヶ浜


 昔、平岩の南の浜辺で、お金という娘がハマグリを採っていると、通りかかった旅の僧が、ハマグリを恵んでほしいと頼みます。

 お金は、石ころだとウソをついて恵んでやりません。僧は黙って立ち去り、北の浜辺でハマグリを採っているお倉という娘に出会います。お倉は、僧の求めに応じてハマグリを渡します。
 僧は、お倉に礼を述べ、「この浜からハマグリが絶えることはあるまい。」と言って立ち去ります。
 その後、お倉がいた浜では、より多くのハマグリが採れるようになり、お金がいた浜では、まったく採れなくなったため、北の浜をお倉ヶ浜、南の浜を金ヶ浜と呼ぶようになったという民話が伝わっています。
 旅の僧は、弘法大師空海であったとも伝えられており、日本各地に伝わる「弘法大師の貰い水(飲ませなかった井戸が濁り飲めなくなる)」や「弘法大師の貰い芋(恵んでやらなかった芋が石のように固くなり食べられなくなる)」など類似した話が伝えられています。
 日本以外でも、変装して訪れた神に宿を貸した者は、災害から逃れるが、宿を断った者は、災害に遭うという神話が、ギリシャ神話やゲルマン神話など世界各国にあります。
 弘法大師の言い伝えは、中世以降に日本各地を巡った修行僧によって、弘法大師の超人的な神秘性とともに民衆に広まり、語り継がれたと考えられます。

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