広報ひゅうが平成30(2018)年7月号

海の河童の話


日向市政施行40周年 ふるさとの昔話


細島の昔話より
 昔、細島の海にヒョウスボが昔住んでいました。ある日、ヒョウスボが海から上がってきて「私の住んでいる岩場の近くに、どこから流れついたのか一本の包丁があって、怖くて夜も寝られません。どうか助けてください。お礼はきっとします。」と江川家に来て頼みました。早速、海に潜ってみると一本の包丁が岩場に落ちており、それを取り除いてやりました。
 ヒョウスボは、「ありがとうございます。今後、あなたのご家族や子孫には、決して私たちはいたずらをしませんので海に行かれる時や海に入られる時には、江川または堺屋一統(一族)と叫んでください。約束は必ず守ります。」と言って海に帰って行ったとのことです。
 南九州では、ヒョウスボまたはヒョウスベと河童のことを呼ぶ地域が多いのですが、ヒョウスボは、体に毛が生えた河童として区別している地域もあります。
 河童が、恩を受けた一族に害を加えないと約束する話は、全国に似た話があり、門川町にも河童の恩返しの話があります。
 また、河童が包丁を怖がるのは、水の精霊は、金物を嫌うと信じられていたためです。雨乞いの儀式で、鉄の道具を井戸や池に投げ込み、水の精霊を怒らせて雨を降らせるという地方もあります。
 話に出てくる堺屋を屋号とする江川家は、細島に実際にあった商家で、子孫となる方が、細島だけではなく、日向市内に広くお住まいです。
 河童というと、川などの淡水に住む妖怪のイメージが一般的ですが、細島の昔話では、海の妖怪として語られており、川や海の区別なく、水に関係する妖怪を河童やヒョウスボと言ったのでしょう。
 昔話からも、多くの人が出入りしたであろう港町細島の人々の人柄が感じられます。

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