広報ひゅうが平成29(2017)年11月号

日向市の民話「大蛇の子」


民話の中にも出てくる石並川


 むかし、東郷庭田に住む夫婦のところに、身重の女性が訪れ、「一晩泊まらせてほしい」と願い出ます。夫婦は快く宿を貸しますが、女性は、「今夜お産をしなければならない。お礼はするのでお産をするところは見ないでほしい」と言い、夫婦は困惑しましたが、了解します。ところが、夜中に主人が女性の部屋をのぞいてしまいます。部屋の中では大蛇が今にも子蛇を産もうとしていました。
 朝になると、女性が赤ん坊を抱いて部屋から現れ、「自分は蛇身の主である。本来ならばのぞいた男を殺すところだが、生まれるのを見られたこの子は、見た人間に十年育てられなければ神通力を得ることができない。この子を十年育ててもらいたい」と願い出ます。夫婦が赤ん坊を育てることを承諾すると、女性は多くの黄金を夫婦に渡し去ってゆきます。そして十年後。女の子は育ててもらった礼を言うと、下の川へと去っていきます。夫婦が、後を追いかけ、川の「つらせ淵」に向かってもう一度姿を見せてくれと叫ぶと、空が黒雲に覆われ、川から大蛇が現れ、夫婦をにらみつけます。夫婦が、「分かった、二度と会わない・・・」と言うと、大蛇は消え、渦もおさまりました。
 文中の「下の川」とは、石並川のことで、昔は「つらせ淵」の近くに祠があり、白蛇を見たという話も伝えられていたそうです。その後の夫婦が、残った黄金で幸せに暮らしましたと終われば良いのですが、この話には続きがあり、東郷町誌に「甚五郎ごけ」という題名で載っています。東郷町誌は、市立図書館に有りますので、ぜひ、話の続きをご覧ください。

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